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第29回 世界最大級の天体観測望遠鏡とばね

みなさん、こんにちは。
暦の上では、もう秋です。
秋になると、夜空を見上げる機会が多くなるのは、私だけではないようです。

涼しくなるに従い、上空の空気が透き通り、夜空もクッキリ見えるようになります。
天体マニアにとっては、待ち焦がれた季節を迎えます。
人類は古代の頃から、夜空の月や星を見ながら、様々な思いを抱いてきました。
星と星とを線で結んで星座を考え、神々を配置し、信仰や文学の材料としてきました。

今では科学が進歩し、宇宙の遥かなたまで見ることができます。
天体観測用望遠鏡がどんどん進化したからですね。

世界最大級の天体観測用望遠鏡は、ハワイ島にある標高4200mのマウナケア山頂付近に設定された「すばる望遠鏡」です。
1991年に建設に着工し、1999年から観測を開始しました。
光を集める鏡の大きさは、直径8.2m。

ばねの話

このすばる望遠鏡が、2013年7月に、更に性能をアップしました。
望遠鏡の先端に装着されているカメラを交換したのです。
新しいカメラの視野角は、従来の7倍だそうです。
カメラの全長は3m。重さ3トン。8億7千万画素のデジタルカメラです。
ちなみに、それまでのカメラは8千万画素ですから、10倍の画素数です。

もっとすごいのは、このカメラの位置は、1~2マイクロメートルの精度で移動できるのです。
えっ!? 「マイクロメートルと言われても、ピンとこない?」
カメラだけに「ピンと」は重要ですね。
と、洒落ている場合じゃなくて。
1マイクロメートルは、1メートルの100万分の1です。
それでも、ピンとこない?

え~とですね。
人間の髪の毛の直径が60~80マイクロメートルなんですね。
だから、髪の毛の60分の1~80分の1ぐらいですね。

ここで、「えぇ~、すごい!」と思いますよね(笑)。
そんな精度でカメラを動かせるなんて!

で? それと、ばね、何か関係があるのか? ですよね?
はい。あるんです。

実は、すばる望遠鏡の大きな鏡の姿勢を変化させるために、ばねが利用されているのです。
他の望遠鏡や、望遠鏡以外の装置で、何かを動かそうとした場合、通常は「アクチュエーター」という駆動装置を使うのですが、すばる望遠鏡のように微妙に物体(鏡)を移動させるためには、アクチュエーターではスピードや移動精度を満足させることができないんです。

ばね

天体に浮かんでいる星から地球へ届く光は、細かく揺れているんです。
その光の揺れに呼応するように鏡を動かさなければ、正確な映像を捉えることができなんいんです。

ところで、そんなにすごい「すばる望遠鏡」で何を観測しているか、興味がありますよね?
はい。それは、「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」なんです。
またまた、難しい言葉が出てきましたね。
簡単に言うと、「暗黒物質」は全ての物をすり抜ける何か重いもの。
「暗黒エネルギー」は、宇宙を引き伸ばしているエネルギーです。
人類が知っている星や銀河などは「通常の物質」と呼ばれていますが、宇宙に存在する全ての中では、わずか5%以下でしかないんです。
残りの95%以上のものは目に見えず、正体不明な「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」なんですよ。

さぁ~、あなたも、今日から夜空を見上げ、この正体不明なものを探してみませんか?

さて、今回はここまでです。
第4回 宇宙のばね」にも、暗黒物質などについて語っていますので、そちらも是非ご覧ください。

それでは、みなさん、お元気で!

ばねっこ(筆)